人肉事件が司法の場に持ち込まれた際、法廷は常に極めて重い判断を迫られてきました。多くの近代法体系において「人を食べる」こと自体を単独で処罰する法律は稀であり、原則として殺人罪や死体損壊・遺棄罪の適用によって裁かれます。
特に焦点となるのは、以下の2点です。
- 刑法上の緊急避難(違法性阻却):アンデス山脈事故やひかりごけ事件のように、生命の危機を回避するための不可避な行為であったか否か
- 責任能力の有無(心神喪失・心神耗弱):猟奇事件において、犯行時に善悪を判断し行動を制御する精神的制御能力が存在していたか
また、メディアや映像分野におけるアプローチも変化を遂げています。過去には猟奇性やセンセーショナリズムばかりが強調される傾向がありましたが、2010年代以降は犯罪ドキュメンタリーや学術的アプローチが洗練され、加害者の生育環境、精神病理の深層、遺族の救済、極限心理の分析に主眼が置かれるようになりました。2017年に公開された佐川一政とその実弟を追ったドキュメンタリー映画『カニバ』のように、タブーとされる人物の老いと孤独、人間の業を客観的に記録した作品は、国際的な映画祭で大きな議論を呼びました。