いま、街を覆っているのはかつてない「希少本バブル」と「需要の二極化」だ。東京都古書籍商業協同組合の市場関係者が明かすところによれば、明治・大正期の初版本や戦前のアート・写真集、さらには昭和サブカルチャーの一次資料に至るまで、状態の良い稀覯(きこう)本の取引価格が右肩上がりを続けている。欧米やアジア圏の大学図書館、個人収集家による買い付けが激増し、優良な古書が海を渡るケースが後を絶たない。
一方で、どこでも手に入る大量印刷の文庫本や新書は値を崩している。「かつてのように『なんとなく棚を眺めて100円の均一本を買う』客層だけでは店を維持できない」と、創業80年を超える老舗の店主は吐露する。真に価値ある一冊を鑑定眼で見極め、適正な国際相場で提示できる専門店だけが圧倒的な求心力を放つ。棚の陳列ひとつにも、生き残りをかけた極めてシビアな選書眼が投影されている。