舞台『千と千尋の神隠し』の最大の魅力は、4人の千尋がそれぞれ全く異なるアプローチで役を生きている点にあります。ネット上の観客レビューでも、それぞれの個性に熱狂的な支持が集まっています。
橋本環奈が演じる千尋は、抜群の華やかさと「生き抜く生命力」に満ちています。初演が初舞台だったとは思えない堂々たる存在感で、怯えていた普通の少女が、油屋の労働環境のなかで逞しく泥臭く成長していくグラデーションをドラマチックに体現しました。走る姿一つをとっても、アニメーションからそのまま飛び出してきたかのような驚異的なシンクロ率を誇ります。
対して上白石萌音の千尋は、深い演技力と繊細な感情表現が光ります。声のトーンや息遣いだけで千尋の孤独や優しさを劇場全体に染み渡らせる技術は圧巻です。特にハクとのシーンやカオナシと対峙する場面で見せる包容力は涙を誘い、ミュージカルファンや演劇通からも絶大な信頼を獲得しています。
新風を吹き込んだ川栄李奈は、持ち前の高い演技力とリアリティあふれる表情で等身大の恐怖と勇気をリアルに演じ切り、福地桃子はどこか素朴で無垢な少女が異界に迷い込んでいく過程を自然体で表現して絶賛を浴びました。「どの千尋を観ても新しい発見がある」という観客のリピート欲を刺激する要因がここにあります。