さらに事態を複雑にしているのが、昨今の生成AIの普及である。検索エンジンや対話型AIに「日本の有名なホラー映画は?」と問いかけると、AIがネット上の誤情報を学習し、「八つ墓村のスケキヨ」という存在しないキャラクターをさも事実のように出力する事例が相次いでいる。テクノロジーの進化が、人間の記憶のバグを固定化し、新たなデジタル伝承を作り出しているのだ。
「AIは多数決で真実を決める」と指摘するのは、ネット文化に詳しいITジャーナリストだ。多くの人がネット上で書き間違えた情報が、AIの手によって「公式回答」へと昇華されていく。私たちは今、機械によって書き換えられた新しい横溝文学の歴史を目撃しているのかもしれない。