五輪マーク由来と歴史を辿ると、激動の20世紀初頭の国際情勢が色濃く反映されていることが分かります。
クーベルタン男爵がこのデザインを完成させたのは1913年。翌1914年にパリのソルボンヌ大学で開催されたIOC設立20周年記念式典で正式にお披露目されました。しかし、直後に第一次世界大戦が勃発。1916年に予定されていたベルリン大会は中止を余儀なくされ、世界は未曾有の戦禍に巻き込まれました。
戦争の惨禍を乗り越え、五輪旗として初めてスタジアムに掲揚されたのは、1920年のアントワープ大会(ベルギー)でした。戦争で傷ついた世界が再びスポーツのもとに集い、平和を誓い合う舞台で翻った5つの輪は、国際社会の再生を告げる力強いモニュメントとなったのです。
一方、日本国内で「オリンピック」を「五輪」と呼ぶようになった背景にも独自の歴史があります。1936年、読売新聞の運動部記者であった川本信正氏が、新聞の限られた見出しスペース(横見出し数文字)に収めるため、宮本武蔵の著書『五輪書』に着想を得て考案した略称でした。5つの輪の視覚的イメージと見事に合致した「五輪」という言葉は、瞬く間に全国のメディアへと波及し、現代の日本語に深く定着しています。