長谷川町子の全貌を語るうえで欠かせないのが、『いじわるばあさん』や『エプロンおばさん』といった傑作の存在だ。ほのぼのとしたホームドラマの枠を飛び越え、人間のエゴイズムや社会の不条理を痛快な毒気で笑い飛ばすこれらの作品には、彼女のもうひとつの真骨頂がある。
4コマ漫画という極めて制限の多いフォーマットの中で、起承転結を完璧に組み立て、最後のコマで常識を鮮やかに裏返す。その切れ味は現代のショートショート文学にも匹敵する。毒と愛嬌が絶妙なバランスで同居するキャラクターたちの造形は、人間という生き物に対する深い慈しみと、冷徹な観察眼の両方がなければ決して描けないものだ。