根本的な疑問が残る。なぜ人々は、存在しないジュリエットに手紙を書くのか。
一つの答えは、匿名性だ。実在の友人や家族には話せない悩みでも、架空の存在になら打ち明けられる。ジュリエットは裁かない。恥じることもない。ただ受け止めてくれる存在として、人々の心の中に存在する。
もう一つは、物語の力だ。『ロミオとジュリエット』は悲劇だが、同時に愛の純粋さを象徴する物語でもある。その物語の中心人物に手紙を書くという行為は、自分の恋愛を物語の一部として意味づけることでもある。個人的な経験を普遍的な物語に接続することで、孤独な悩みは共有可能な人間経験へと変わる。
そして最後に、希望だ。ジュリエットに手紙を書く人々は、答えを求めている。解決策や慰めを求めている。たとえ架空の存在からの返事であっても、誰かが自分の言葉に耳を傾け、応答してくれるという事実そのものが、救いになる。