装飾に情熱を傾ける保育者や介護職員がいる一方で、SNSや福祉関係者のコミュニティでは、日々の業務過多に対する悲痛な叫びが散見されます。厚生労働省の各種調査や民間保育研究所のデータによると、保育士の持ち帰り仕事やサービス残業の主たる要因として「行事準備」と「壁面環境の作成」が常に上位に挙げられています。
「2月は発表会の衣装づくりや要録の締め切りが重なり、毎晩22時過ぎまで持ち帰りの画用紙を切っていた。子どものための保育なのか、保護者に見せるための見栄え勝負なのか分からなくなった」(都内私立認可園・勤務5年目保育士の手記)
こうした葛藤のなかで誕生したのが、現役世代の当事者による草の根の支援サイトです。自宅で乳幼児を育てながら運営されている「wosawosa」のようなフリー素材サイトは、「現場の同僚や同じ悩みを持つ保育士の帰宅時間を1時間でも早めたい」という切実な想いから開設されました。印刷して即座に使える等身大の型紙や、切る回数を最小限に抑えた設計データは、全国数万人の保育士にダウンロードされ、業務負担の軽減に寄与しています。
一方、高齢者福祉の現場である介護施設 2月デイサービス壁面では、目的が根本から異なります。あるデイサービスの生活相談員は、現場の連絡ノートで次のように語っています。
「片麻痺のある利用者様が、左手で一生懸命にお花紙を丸めて梅の花を作ってくださった。『昔、庭の梅を見ながらお茶を飲んだね』と思い出話を語り合い、手が動くことへの自信を取り戻す契機になった。壁面は単なる飾りではなく、回想法を取り入れた心のリハビリテーションそのものなのです」
このように、幼児施設と高齢者施設では壁面に求める社会的・機能的価値が異なります。福祉現場の実情に合わせた無理のない設計が求められています。