京都に数ある個性的な地名のなかでも、ひときわ強い印象を残すのが「百万遍」です。この呼び名は単なる交差点の愛称ではなく、交差点の北東に位置する浄土宗大本山「百萬遍知恩寺」の寺号に直接由来しています。
歴史をさかのぼること鎌倉時代末期の元弘元年(1331年)、京都で猛烈な大疫病が流行しました。事態を重く見た後醍醐天皇の勅命を受け、知恩寺の第八世であった善阿空円上人が宮中で7日7晩にわたり念仏を百万回唱える「百万遍念仏」を修しました。すると疫病は見事に収束。その功績を称えた後醍醐天皇から「百萬遍」の勅号を賜ったことが、この地名のはじまりです。
寺院は何度かの移転を経て元禄時代に現在の地へ定着しましたが、いつしか寺院名が周辺一帯の通称として定着し、現在に至るまで地域のアイデンティティとして受け継がれています。境内には今でも、大勢で巨大な数珠を繰りながら念仏を唱える伝統儀式「大数珠繰り」の念仏信仰が息づいており、災厄を払う祈りの街としての厳かな空気感を肌で感じることができます。