『カーネーション』を語る上で最大のトピックとなったのが、物語終盤となる第22週(第128回)における尾野真千子さんから夏木マリさんへのヒロイン交代劇です。放送当時、視聴者の間では「なぜ最後まで尾野真千子でいかなかったのか」「体調不良や降板騒動なのか」と憶測が飛び交い、一大センセーションとなりました。
この交代劇の真相は、脚本の渡辺あや氏と制作統括が最初から企図していた「老いと時間のリアルな描写」にあります。第22週以降、物語は一気に1985年(昭和60年)の糸子72歳へとジャンプします。20代〜30代の若手俳優に特殊メイクを施して70代・80代を演じさせる手法では、人生の酸いも甘いも噛み分けた老境の凄みや、年老いてもなお衰えない底抜けのエネルギーを表現しきれないと判断されたためです。
交代直後は「オノマチロス」に陥る視聴者が続出し、ネット上でも賛否両論が巻き起こりました。しかし、夏木マリさんが画面に登場した瞬間、その圧倒的な存在感、岸和田のゴッドマザーたる風格、そして歳を重ねても衰えない職人魂を見せつけたことで空気は一変します。「このパワフルな晩年は夏木マリにしか演じられない」と視聴者を納得させ、結果としてドラマの完成度を極限まで高める決定打となりました。