2019年に105期生として首席クラスの成績で入団を果たし、宝塚歌劇団星組に配属された稀惺かずと。彼女がその真価を決定的に証明したのが、フレンチ・ミュージカルの傑作『1789 -バスティーユの恋人たち』の新人公演である。主演のロナン役に大抜擢された彼女は、革命の炎に身を投じる若者の葛藤と情熱を、荒々しくも気品に満ちた男役の芝居で見事に演じきった。
プレッシャーで押し潰されそうな大舞台。しかも本公演でトップスターが演じる難役だ。だが幕が上がると、そこには誰の模倣でもない「稀惺かずとのロナン」が生きていた。伸びやかな歌声と、空間を支配する研ぎ澄まされた身体性。観劇した多くのファンや批評家が「七光りではなく、完全な実力による抜擢だった」と舌を巻いた瞬間である。