矢部和夫氏の歩みを理解する上で欠かせないのが、植物生態学という純粋科学を基盤に据えつつ、それを都市計画や空間デザインへと昇華させたユニークな学術的キャリアです。
基礎科学としての植物学を修めた後、北海道大学大学院環境科学研究科へ進学。寒冷地特有の泥炭湿原における植生構造と環境要因の相関関係に着目し、学位(環境科学博士)を取得しました。その後、研究教育の拠点を道内の高等教育機関に置き、札幌市立大学の開学期からデザイン学部教授として参画。同大学において副学長や研究科長といった重要役職を長年歴任し、学問分野の垣根を超えた先進的な環境教育プログラムを構築しました。
公的機関における活動実績も極めて豊富です。環境省の重要湿地選定検討会や、北海道環境審議会などの各種専門委員会で委員・座長を務め、国の自然再生推進法に基づくプロジェクトにも深く関与。単なる机上の理論にとどまらず、行政施策や地域開発の現場に対して科学的根拠に基づいた提言を行い続けてきた点が、同氏の経歴を際立たせる大きな特徴です。