タイトルに含まれる「アリア(Aria)」という言葉。もともとはオペラなどで歌われる抒情的な独唱曲を意味する言葉だ。ドイツ語やフランス語では「エア(Air)」とも表記され、文字通り「空気」や「風」のように軽やかに流れる旋律を指している。
J.S.バッハが1730年代頃に作曲した『管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV1068』の第2曲「エア」は、本来は明るく華やかな弦楽合奏のために書かれたものだった。そこにあったのは、宗教的な厳かさと、人間の息遣いに似た美しいメロディの融合である。バッハは単なるBGMとしてではなく、空間の「空気」そのものを変革する祈りの構造としてこの旋律を組み上げたのだ。