医療の現場において、「どこからが延命治療にあたるのか」という明確な法的定義が存在するわけではありません。治療行為そのものの種類ではなく、「患者の病状が回復可能な段階か、それとも回復の見込みがない終末期医療の段階か」という医療目的の違いによって区分されます。
例えば、肺炎を起こした若い患者に人工呼吸器を装着して回復を待つ行為は「救命治療」です。しかし、多臓器不全などで生命維持機能が限界に達し、老衰や末期がん等で回復が見込めない状態において、心拍や呼吸を機械的に維持するためだけに施される処置が「延命治療」と呼ばれます。
混同されやすい概念として「緩和ケア」が挙げられますが、両者の目指す方向性は根本から異なります。延命治療が「生命の長さ(心拍・呼吸の継続)」を最優先にするのに対し、緩和ケアは「身体的・精神的な苦痛の除去とQOL(生活の質)の維持」を目的としています。痛みを抑え、意識を保ちながら穏やかな時間を過ごすための医療的アプローチが緩和ケアです。