渡辺裕之さんが日本のエンタメ界に刻んだ足跡は、あまりにも偉大です。アクション俳優としての黎明期から、国民的ヒーロー作品、重厚な人間ドラマまで、幅広いジャンルで唯一無二の存在感を放ちました。
彼の名を日本中の津々浦々にまで轟かせたのが、大正製薬『リポビタンD』のテレビCMです。断崖絶壁で手を差し伸べ合い叫ぶ「ファイト一発!」の合言葉は、昭和から平成のポップカルチャーを象徴する代名詞となりました。鍛え上げられた肉体と屈託のない笑顔は、逞しい日本男児の理想像として愛されました。
特撮作品における功績も特筆すべきものがあります。『ウルトラマンガイア』(1998年)では、防衛チームXIG(シグ)を率いる石室章雄コマンダー役を熱演。冷静沈着でありながら部下への深い情愛と信念を持つ指揮官像は、今なお歴代特撮作品の中で「最高の隊長」として語り草になっています。
さらに、ダークファンタジーの金字塔『牙狼〈GARO〉』シリーズでは、主人公・冴島鋼牙の父親であり先代の黄金騎士である冴島大河を重厚に演じ切りました。2007年の映画『劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生!』では、当時51歳にして最高齢(当時)の仮面ライダーとなる仮面ライダーガオウ役に抜擢。「ウルトラマン、牙狼、仮面ライダー」という日本の三大特撮体系すべてで主要な戦士・指導者を演じた稀有な俳優として、特撮ファンから絶大なリスペクトを集めています。
昼の連続ドラマ『愛の劇場 温泉へ行こう』シリーズやサスペンスドラマで見せたコミカルかつダンディな演技など、役柄の引き出しの広さは名バイプレイヤーとしての確固たる地位を築いていました。