多くの人が最も気にかけていたのが「このネズミは本物なのか、それとも模倣犯による偽物なのか」という真贋の問題でした。
バンクシー作品の真贋判定は、作家本人が設立した公式認証機関「ペスト・コントロール(Pest Control)」が一手に担っています。東京都も関係者を通じて照会を試みましたが、ストリートに描かれたパブリックな落書きに対して同機関は「ストリート作品に公式な鑑定書(COA)は発行しない」という厳格なポリシーを持っています。
そのため、紙の証明書が発行されることはありませんでした。しかし、専門家による詳細な筆跡・技法分析や、バンクシーが2003年頃に東京を訪れていた記録(当時の写真や目撃証言、映画の映像資料など)と照合した結果、「2003年前後にバンクシー本人が描いた作品である可能性が極めて高い」という結論に達しています。10年以上もの間、誰にも気付かれずに東京港の片隅で風雨に耐えていたというドラマチックな背景も含め、美術的・歴史的な価値が広く認められる形となりました。