日本のコーヒー史において「元年」と呼ばれる節目は、何を基準に置くかによって大きく異なります。文化としての夜明けを指すならば1888年、産業と大衆消費の本格的な幕開けを指すならば1960年が最大の転換点です。
日本に初めてコーヒーが伝来したのは江戸時代前期、出島(長崎)を通じてオランダ商人から持ち込まれたとされています。当時の文献には「焦げ臭くして味わうに堪えず」といった記録が残り、一部の役人や商人、蘭学者らの好奇の対象にとどまっていました。これが一般庶民の手の届く嗜好品へと昇華する過程には、明確な時代のメルクマールが存在します。
現代の視点から振り返ると、文化、産業、流通、そして抽出技術の革新ごとに「第2、第3のコーヒー元年」と呼ぶべき地殻変動が起きており、それらが重層的に積み重なることで独自の日本型コーヒーカルチャーが形成されました。