赤穂事件から300余年の時が流れた。にもかかわらず、大石内蔵助率いる義士たちの物語は風化するどころか、今なお強い磁力を放ち続けている。兵庫県赤穂市に位置する赤穂大石神社は、義士たちの偉業を後世に伝えるため大正期に創建され、大願成就や心願成就の象徴として全国的な信仰を集めてきた。一方で京都の山科大石神社は、内蔵助が討ち入り前の潜伏期間を過ごしたゆかりの地に建ち、静かな決意と潜伏の時を耐え抜いた忍耐の象徴として知られる。
二つの神社を貫くのは、圧倒的な「目的遂行の意志」だ。途方もない試練と期間を耐え抜き、最後に見事な初志貫徹を果たしたストーリーは、現代の過酷な社会を生き抜く人々にとって最高の精神的支柱となる。絵馬掛けに並ぶ木札を見渡せば、かつて多かった伝統的な祈願に加え、「己の意思を最後まで貫く」「事業を必ず成功させる」といった、自らへの誓いを打ち立てる切実な言葉が目立つ。