『雨の御堂筋』を語る上で欠かせないのが、作詞を手掛けた林春生による緻密なリリックです。歌詞の中に登場する地名は、大阪の地理に精通している人であれば誰もがその移動ルートを鮮明に思い浮かべることができます。
主人公の女性は、心変わりした恋人を追い求めて、冷たい小ぬか雨が降る御堂筋へと飛び出します。梅田を出発点として、イチョウ並木を抜け、「本町あたりに あなたはいると」という噂を頼りに南下し、心斎橋を通り過ぎ、やがて夜の難波(なんば)へとたどり着く構成になっています。
このキタからミナミへと一本の幹線道路を南下していく空間の移動が、切迫した主人公の焦燥感や心の揺らぎと見事にシンクロしています。単なる情緒的な地名の羅列ではなく、雨に濡れたアスファルトの匂いやヘッドライトの残光までもが浮かび上がる映画のような描写力が、聴く者の追体験を促したのです。