現代のボートレースにおいて勝利の必須テクニックとされるのが、艇の上に立ち上がり、体重移動によって旋回半径を最小限に抑える「モンキーターン」です。漫画の題材にもなり一躍有名となったこの華麗な技は、旋回スピードを格段に向上させる反面、バランスを崩した際の危険度を飛躍的に高める諸刃の剣でもあります。
中腰の体勢で高速旋回を試みる際、艇体が水面のうねりや他艇の引き波に乗ってしまうと、レーサーは弾丸のように水面へ放り出されます。このとき、立ち姿勢に近い状態で投げ出されるため、落水時の受身が取りにくく、艇体との分離が遅れるリスクが生じるのです。モータースポーツとしてのボートレースが抱える最大のジレンマは、スピードとスリルを追求すればするほど、身体剥き出しの選手にかかる物理的リスクが増大する点にあります。
現在では養成所時代からモンキーターンの基本姿勢や落水時の安全な離脱方法が厳しく叩き込まれています。しかし、実戦でのコンマ01秒を争う極限状態においては、安全姿勢の維持と勝利への執着が背中合わせとなり、構造的なリスクを完全に排除することは容易ではありません。