物語の冒頭における万丈龍我は、絵に描いたような絶望の淵に立たされていました。元々は将来を嘱望されたプロ格闘家でしたが、不治の病に侵された恋人・小倉香澄の莫大な手術費用工面に苦しんでいた際、裏社会の八百長試合への関与を強要され、格闘界から永久追放処分を受けます。
さらに彼を襲ったのが、科学者・葛城巧を殺害したという「身に覚えのない冤罪」でした。東都刑務所に収監された龍我は、所内に潜入していた秘密結社「ファウスト」によって人体実験の被験者として連れ去られます。常人であれば命を落とす危険極まりないネビュラガス投与実験に耐え抜き、脅威の生命力で脱走。そこで記憶喪失の天才物理学者・桐生戦兎と運命的な出会いを果たしました。
東映の公式解説や劇中の描写が示す通り、龍我の初期の行動原理は「自身の無実を証明すること」と「恋人・香澄の救出」という極めて個人的な動機でした。しかし、スマッシュに改造された香澄の非情な死を目の当たりにし、戦兎の「誰かのために戦う」という信念に触れることで、彼は私怨を超えて他者を守る戦士へと脱皮していきます。この「理不尽な不条理から這い上がる愚直な精神」こそが、視聴者の心を激しく揺さぶる原点となりました。