細木数子の若き日は、まさに波乱万丈という言葉そのものだった。東京・新小岩のカフェの娘として生まれ、戦後の混乱期を生き抜いた彼女は、早くから実業家としての頭角を現す。銀座でクラブを経営し、政財界の有力者たちと渡り合う中で、彼女は人間の業や運命の冷酷さを嫌というほど思い知らされた。
20代前半で経験した短期間の結婚生活について、彼女自身がメディアで詳しく語ることは滅多になかった。そこにあったのは、愛ゆえの苦悩と、自立した女性として生きざるを得なかった時代の壁だ。「女一人で生きていくためには、誰かに頼るのではなく自分が強くなるしかなかった」。晩年、親しい関係者にぽつりと漏らしたその言葉に、彼女が背負った孤独の深さが滲み出ている。