作品が持つ最大の魅力は、過度に政治化することなく描かれた北朝鮮の泥くさくも温かい生活風景にある。闇市場「チャンマダン」での密売、頻繁に起きる停電、自家用太陽光パネルの普及、キムチを保管するための地下穴「キムチウム」。これらリアリティあふれる小道具や設定は、決して制作者の想像だけで作られたものではない。
ヒット作を連発してきた脚本家パク・ジウンは、執筆にあたり数多くの脱北者へ徹底的なインタビューを実施した。特に元軍人や平壌出身の脱北者がアドバイザーとして現場に参加し、言葉の方言や語尾のニュアンス、軍内部の階級意識、さらには主婦たちの井戸端会議の空気感に至るまで細かく指導したという。「作中の村の生活描写は80%以上が実際の北朝鮮の地方都市そのものだ」と脱北者たちが口を揃える通り、ステレオタイプな偏見を排した人間の泥臭いドラマが、国境を越えた深い共感を生み出した。