当時の邦画業界において、哲学的メッセージを前面に押し出した文芸映画の大規模公開はリスクの高い試みとされていた。しかし、東映を中心とする制作陣と神山征二郎監督の意志、そして五木寛之の強い原作力が噛み合い、映画は興行的にも高い成功を収めた。これは、単なる娯楽性に頼らない深い人間描写が商業的にも成立することを示す歴史的快挙であった。
邦画業界におけるヒューマンドラマの系譜を振り返るとき、本作は文芸映像化の到達点の一つとして挙げられる。流行を追うのではなく、時代を超えて残る人間の業や愛を描くことの大切さを、映画『大河の一滴』は証明してみせたのだ。