この地に刻まれた歴史の深さは、並の温泉地の比ではない。平家との戦いに敗れ、伊豆に流されていた源頼朝は、再起をかけてこの地で祈りを捧げた。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも描かれた武将たちのドラマチックな愛憎や権力闘争の陰には、常にこの湯の存在があったとされる。頼朝が妻の北条政子とともに信仰を寄せた歴史的背景は、今なおこの地に重厚な空気感をもたらしている。
時代が下り、江戸時代になると、今度は天下人・徳川家康がこの温泉の虜となった。家康は自らの湯治だけでなく、熱海から江戸城まで湯樽を運ばせる「御汲湯(おくみゆ)」を行わせたことで有名だ。武士たちが天下泰平を願い、あるいは傷を癒やした歴史の舞台として、この横穴源泉は日本の歴史を動かした英傑たちを静かに見守り続けてきたのである。