市立福山高校は県内有数の進学校だ。7時限目までの授業を終え、グラウンドに球児が集まる頃には既に陽が傾き始めている。他の部活動とグラウンドを分け合うため、メイングラウンドを全面使えるのは週に数回。平日の練習時間は、準備や片付けを含めてわずか90分程度に過ぎない。
「時間がないことを言い訳にした瞬間、強豪校には一生勝てない」。主将の言葉は重い。限られた時間の中で彼らが徹底したのは、1秒も無駄にしない超高密度のトレーニングだった。ノックの合間にも瞬時に次の動きへと移行し、全員が常に次のプレーを頭の中でシミュレーションする。従来型の「質より量」を誇る高校野球の常識に対する、鮮やかなアンチテーゼがそこにはあった。