桂歌丸の芸の原点には、師匠である桂米丸の教えがあった。新作落語の名手として知られた米丸から授かったのは、言葉の輪郭をクリアに伝える滑舌の美しさと、時代に即したテンポ感だった。師弟の絆は生涯変わりなく、歌丸は自らの成功を常に師匠への感謝とともに振り返っていた。
また、横浜市南区真金町で生まれ育った歌丸は、故郷への愛を胸に抱き続けた。横浜に常設の演芸場を復活させようと尽力し、地元密着の落語会を大切にした姿勢は、横浜市民から「お師さん」と親しまれた所以である。江戸の粋と横浜の下町情緒が同居した独特の語り口は、この土地の風土が育んだものだった。