日本の名だたる現代建築の中でも、異彩を放つアイコンとして語り継がれる作品がある。建築家の妹島和世が主宰する妹島和世建築設計事務所の手によって設計されたこのプロジェクトは、彼女のキャリアにおける重要なマイルストーンとして知られている。のちに西沢立衛と共に結成した建築ユニットSANAAとして、建築界のアカデミー賞と称されるプリツカー賞を受賞することになるが、その根底にある自由な空間思想の原型がここには集約されている。
かつて世界の現代主義建築は、機能性と効率性を優先した直線的なモダニズムを中心にして発展してきた。しかし、妹島はその固定観念を根底から揺さぶった。壁を単なる部屋の隔たりとしてではなく、光や視線、生活の気配を流動的に導く要素として再構築したのだ。内部と外部の境界を曖昧にし、居住空間全体に豊かなシークエンスをもたらすアプローチは、当時の建築界に極めて新鋭な問いを投げかけた。