被災地の尊厳と向き合った記録として、ルポルタージュ『遺体 震災津波とある遺体安置所』は今も特別な存在感を放っている。遺体安置所となった体育館で、言葉を失うほどの凄惨な現場に立ち続けたボランティアや公務員、民間の遺体衛生保全士たちの苦悩と献身。そこには名もなき市民だけでなく、地域を代表する有名人たちの最期の姿も静かに横たわっていた。
著者が記録した現場の生々しい葛藤は、災害時における個人の尊厳をどう守るべきかという重い課題を突きつけた。身元確認の難航、遺族との対面、静寂の中に響く啜り泣き。そのリアルな言葉の積み重ねは、読者に犠牲となった一人ひとりの「人生の重み」を強烈に想起させる。