「なぜ、締め切ったはずのクローゼットに虫がいるのか」という疑問を持つ人は多い。生活害虫・応用昆虫学の研究領域において、長年にわたり害虫の生態を分析してきた元国立予防衛生研究所の安富和男氏らの知見によれば、成虫は屋外の花壇や洗濯物、あるいは外出時の衣類に付着して室内に持ち込まれるケースが大半を占めるという。特に注意すべきは、衣類害虫として知られる イガ (Tinea pellionella) と コイガ (Tineola bisselliella) の存在だ。これらは外から静かに侵入し、暗く風通しの悪い場所に卵を産み付ける。
ふ化した幼虫は自ら作製した筒状の「筒巣(ケース)」を背負って移動し、周囲の素材を貪り喰う。一度室内への侵入を許すと、短期間で大量発生に至る構造がここにある。住環境の気密化が、図らずも彼らにとって天敵のいない理想的な温床を作り出しているのだ。