坂本冬美の人生を語る上で欠かせない存在が、恩師である作曲家・猪俣公章だ。1980年代後半、内弟子として門をたたいた彼女は、厳しい指導のもとでプロとしての基礎を徹底的に叩き込まれた。猪俣の指導は愛にあふれ、時には実の父親以上に温かく彼女の成長を見守った。
デビュー曲『あばれ太鼓』の大ヒット以降、師匠から受け継いだ歌の心を守り続けることが彼女の原動力となった。恩師の教えを胸に抱き、演歌や歌謡曲の可能性を切り拓く作業に没頭する中で、結婚や恋愛という選択肢は自然と後回しになっていったのだろう。師と仰ぐ存在への深い感謝と恩返しへの思いが、彼女の歌手人生の軸となっている。