多くの乗客を悩ませる車内の暑さ。その背景には、単なる冷房の効き目不足にとどまらない複雑な要因が絡み合っている。
鉄道車両の冷房開発に携わる空調エンジニアは、「新幹線は一般的な住宅やオフィスビルとはまったく異なる熱負荷に晒されている」と指摘する。時速300km前後で流れる外気との摩擦熱に加え、二重構造の巨大な客室窓から差し込む直射日光、そして満席時に乗客一人ひとりが発する体温と湿気が、車内の特定エリアに熱を滞留させるのだ。
特に日中の日差しを受ける窓側のA席やE席、さらにエアコンの吹き出し口から遠い中央付近の座席は、冷気が届く前に輻射熱で局所的に温度が上がりやすい。2026年現在、各鉄道会社では車内平均温度を26度前後に維持する自動制御システムを導入しているが、座席ごとの「体感温度差」までは完璧に打ち消せないのが現実である。