京都・太秦に位置する東映京都撮影所や松竹撮影所から車で数分という地理的アドバンテージは、大覚寺を「日本一時代劇が似合う寺院」へと押し上げた。広大な境内は、限られた予算と時間の中で多彩なカットを撮り分ける監督たちにとって、まさに宝の山だったのだ。
撮影現場の舞台裏には、知られざる職人技とエピソードが満載だ。例えば国民的番組『水戸黄門』や『必殺仕事人』では、境内の竹林や回廊が幾度となく使用された。一見すると別々の場所に思えるカットも、実は同じ境内の角度を変えて撮影されたものが少なくない。カメラの向きひとつで、旅の道中にも江戸市中の暗闘の場にも化ける。まさに映像マジックである。
さらに『暴れん坊将軍』で松平健が魅せた躍動感あふれる殺陣や、美空ひばりが銀幕で見せた華麗な佇まいも、この地で刻まれた歴史の一頁だ。当時の撮影現場を知るベテランスタッフは「大覚寺の池のほとりに立つと、光の入り方が時間帯によって劇的に変わる。それが演者の表情を何倍にも引き立てた」と懐かしそうに語る。