上川口屋の創業は、徳川第10代将軍・家治の時代である1781年にまで遡る。加賀藩の藩主にもゆかりがあると伝えられるこの老舗は、もともとは加賀藩の下屋敷に仕えていた祖先が、鬼子母神の境内で菓子を売り始めたのが始まりとされている。江戸から明治、大正、昭和、平成、そして令和へと時代の波を越えながら、店舗の形態や雰囲気をほぼ変えずに営業を続けてきた。
日本伝統文化を体現するこの存在感は、単に「お菓子を売る場所」にとどまらない。店先に並ぶ硬貨や木製の陳列箱、手書きの値札など、細部に至るまで江戸・昭和の面影が色濃く残されている。時代の変化に合わせて商品を少しずつ入れ替えつつも、子供が小銭を握りしめて買いに来られる「10円〜100円単位の価格帯」を守り続けてきたことこそが、老舗が長年愛され続ける最大の秘密だ。