大相撲の土俵を四方から囲む最前列の座席、それが溜席である。土俵の砂が文字通り飛んでくることから「砂かぶり席」の通称で広く親しまれてきた。この席は単なる高額なプレミアムシートにとどまらない。歴史的には日本相撲協会を長年にわたって経済的・文化的に支えてきた「維持員制度」と密接に結びついている。
かつては「溜会」と呼ばれる伝統的な後援組織や個人の寄付者・法人が多くを所有し、代々受け継がれるケースも珍しくなかった。大相撲本場所の興行において、最前列で静かに取組を見守る和服姿の観客やVIPの姿は、場所の風物詩でもある。伝統と格式が色濃く残る空間だからこそ、独自の品格が求められてきた。