JUN INAGAWAの真骨頂は、一度手に入れた成功のフォーマットに決して安住しない点にある。その最大の挑戦が、2026年に放映されたオリジナルTVアニメ『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』である。
本作において彼は単なるキャラクター原案にとどまらず、作品の根底に流れる世界観やコンセプトの創出に深くコミットした。舞台はオタク文化が徹底的に弾圧・排除されたディストピアの日本。秋葉原を奪還すべく立ち上がる「オタクヒーロー」と、アナーキー、狂太郎、ブルーといった過激な魔法少女たちの闘争を描いたこの物語は、彼自身の原体験――「好きなものを好きと主張することへの社会的抑圧」に対する強烈なアンチテーゼであった。
さらに現在、彼の存在感を一段と高めているのが本格的なDJ活動や音楽コレクティブでの活動だ。東京のアンダーグラウンドクラブシーンを中心に、パンクロック、ハードコア、テクノ、アニソンを縦横無尽にクロスオーバーさせるプレイを展開。ブースに立ち、全身でオーディエンスをアジテートするその姿は、キャンバスに向かう内省的な絵師のイメージとは正反対の野生味を帯びている。
「描くこと」と「音を鳴らすこと」は、彼にとって完全に同義である。視覚と聴覚の境界を融解させ、空間そのものを自らの美学で支配する試みは、2026年現在もさらなる進化を遂げている。