大地真央の宝塚時代が「伝説」と称される最大の理由は、それまでの男役像を劇的にモダナイズしたビジュアルと演技スタイルにあります。
昭和中期のタカラヅカにおける男役メイクや髪型は、重厚な古典歌舞伎や西洋劇の型を厳格に踏襲するものが主流でした。大地真央はその伝統に敬意を払いつつも、当時の最新ファッショントレンドを果敢に導入。短くシャープにカットしたヘアスタイル、ナチュラルでありながら陰影を強調した現代的なステージメイク、スリムなスーツを完璧に着こなす立ち居振る舞いは、舞台写真や若い頃のブロマイドを通じて一般の女性誌でも特集されるほどの社会現象となりました。
その革新性が頂点に達したのが、1984年・1985年に月組で上演されたブロードウェイ・ミュージカルの金字塔『ガイズ&ドールズ』です。大地真央演じるスカイ・マスターソンは、軽妙洒脱なギャンブラーの粋さと大人の色気を兼ね備え、宝塚における海外ミュージカル上演のクオリティを一気に世界基準へと引き上げました。
関係者の回顧録によると、演出を担当した酒井澄夫をはじめとする制作陣は、ブロードウェイ側との権利交渉や楽曲の再現性に細心の注意を払ったとされています。大地真央の卓越したリズム感と英語交じりのこなれた台詞回しは、海外原作者陣からも絶賛を受け、今日に至る宝塚の海外ミュージカル路線の礎を築きました。