大口真神の名が、神道や民俗学の枠組みを一気に超えて世界中に知れ渡るきっかけとなったのが、尾田栄一郎氏による世界的メガヒット漫画『ONE PIECE』のワノ国編です。
重要人物であるヤマトが口にした悪魔の実の真名が、「イヌイヌの実 幻獣種 モデル“大口真神(オオクチノマガミ)”」でした。作中において四皇・カイドウは「大口真神はワノ国の守護神」と言明しており、寒気を操り氷の鎧を纏って戦うヤマトの神々しい姿が描かれています。
この驚くべき設定は、作者の完全な創作ではなく、日本の伝統的信仰を極めて的確に反映したものです。雪山の冷気や過酷な冬の山行を連想させる冷気属性、土地と民を守護する凛とした役割、そして絶滅したからこそ「幻獣」として語られる神秘性。これら伝統的な狼信仰の神髄が見事にキャラクター造形へと結晶化しています。
作品に触れた若いファンや海外のアニメ愛好家が、秩父や奥多摩の神社に聖地巡礼として参詣する光景も珍しくありません。遠い過去に絶滅したはずの日本狼が、現代エンターテインメントの力を借りて新たな命を吹き込まれ、世代を超えて再認識されています。