地球上に14座存在する標高8000メートルを超える山々、いわゆる8000m峰。その中で最も登頂が困難とされるのがK2だ。エベレストが商業登山の発展や人工酸素の普及によって多くの登山者を受け入れるようになった現在も、K2は圧倒的な孤高を保ち続けている。
酸素濃度が平地の3分の1にまで低下する標高8000メートル以上の領域は、人間が長期間生存できないデスゾーンと呼ばれる。K2のデスゾーンにおける最大のアクシデント要因は、頂上直下に横たわる巨大な氷壁「ボトルネック」だ。いつ崩落するとも知れない懸氷(セラック)の下を通過しなければならない恐怖は、文字通り命を懸けたギャンブルに他ならない。
無酸素・単独で8000m峰全14座登頂という金字塔を打ち立てた伝説のクライマー、ラインホルト・メスナーをして「K2こそが真のクライマーにとって最高の試練であり、最も美しい山だ」と言わしめた。気象の急変、時速200キロを超える暴風、雪崩の危険性。エベレストの登頂者が7000人を超えた今なお、K2の登頂成功率が著しく低い理由は、この山が持つ圧倒的な凶暴性にある。