1969年の放送開始から実に30年以上にわたり、弥七というキャラクターの骨格を作り上げたのが名優・中谷一郎だ。もともと黒澤明監督作品などの映画界で重厚な演技を見せていた中谷は、元伊賀の忍者でありながら足を洗い、蕎麦屋を営みつつ黄門様を裏から支えるという複雑な役どころを見事に体現した。
鋭い眼光、闇に紛れる軽妙な身こなし、そして何よりも義理人情に厚い人間味。単なるアクション担当の忍者にとどまらず、旅先の人々の痛みに寄り添う兄貴分としての魅力を吹き込んだのは、中谷独自の演技アプローチだった。彼が吹き込んだ命は、番組のアイコンとして不可欠な存在となっていった。