カミソリシュートの真価を証明する最高峰の舞台が、読売ジャイアンツの主砲・王貞治氏との対決でした。通算868本塁打を誇る世界のホームラン王に対し、平松氏は通算で25本塁打を浴びているものの、同時に王氏から歴代最多タイとなる三振を奪い、幾度となく完封劇を演じています。
一本足打法で右足を高々と上げ、完ぺきなタイミングで振り抜く王氏にとって、内角をえぐる平松氏のシュートは最大の難敵でした。平松氏は王氏の胸元ギリギリを突く「見せ球のシュート」で踏み込みを封じ、カウントを整えてから外角へのストレートや、さらに鋭く曲がる「決め球のシュート」でバットをへし折って凡打に打ち取りました。
王氏自身も後に「平松のシュートは分かっていても身体が引けてしまうほど鋭かった」と述懐しています。巨人の強力打線を相手に、内角への恐れなき一球で真っ向勝負を挑み続けた平松氏の投球スタイルは、まさに当時のセ・リーグを代表する名勝負の連続でした。