本来は歯茎やエナメル質で保護されているはずの象牙質が露出してしまう背景には、現代人特有の生活習慣が深く絡み合っています。臨床データから判明している主要因は以下の4点です。
1. 力まかせのブラッシング(オーバーブラッシング)
「歯を白く保ちたい」「歯垢をしっかり落としたい」という清潔志向の強さが裏目に出るケースです。毛先が硬い歯ブラシを使用したり、ゴシゴシと力強く横磨きを続けたりすると、歯と歯茎の境目(歯頸部)のエナメル質が削り取られてしまいます。特に研磨剤(清掃剤)が多く含まれた歯磨き粉を日常的に使用している場合、研磨作用によって摩耗速度は加速します。
2. 歯周病や加齢に伴う歯茎下がり(歯肉退縮)
歯の根元部分(歯根)には、最初からエナメル質が存在しません。通常は歯茎に覆われて保護されていますが、加齢や歯周病の進行によって歯槽骨が吸収されると、歯茎が下がって歯根の象牙質が露出します。40代以降に知覚過敏を訴える患者の約7割に、この歯肉退縮が関与していると臨床現場では指摘されています。
3. 無意識の歯ぎしり・食いしばり(ブラキシズム)
近年、20代〜30代の若年層で急増しているのが、睡眠中の歯ぎしりや仕事中の「無意識の食いしばり(TCH:歯列接触癖)」です。人の咬合圧は体重の数倍から100kg近くに達することがあります。過度な横揺れの力が歯に加わり続けると、歯の根元にしなりが生じ、エナメル質がマイクロクラックを起こして弾け飛ぶ「アブフラクション(くさび状欠損)」が発生します。
4. 酸性飲食物による「酸蝕歯(さんしょくし)」
柑橘類、酢、炭酸飲料、ワイン、スポーツドリンクなど、pH5.5以下の酸性度の高い食品を頻繁に口にする習慣がある人は、歯の表面が化学的に溶け出す「酸蝕歯」のリスクが高まります。エナメル質が酸で軟化した状態で硬い歯ブラシを当てると、わずかな力でも表面が急速に摩耗してしまいます。