人間の高所に対する恐怖心は、古くから創作物や映画の中で強力な演出装置として用いられてきた。映画史に燦然と輝く巨匠アルフレッド・ヒッチコックの不朽の名作『めまい (映画)』(原題: Vertigo)は、高所による心理的混乱と錯乱症状を視覚的に表現した心理スリラーの傑作として知られる。作中で描かれた歪んだズーム撮影手法は、まさに高所に立った人間が覚える強烈な感覚の乱れをスクリーン上で見事に疑似体験させた。
また近年でも、Netflixなどの動画配信サービスで世界的ヒットを記録した映画『FALL/フォール』のように、地上600メートルの老朽化したテレビ塔に取り残された二人組の極限状態を描く作品が、観客の心拍数を急上昇させている。手汗を握らせるこうした映像体験は、人間が持つ高所への恐怖がいかに根深く、本能的かつ強烈なものであるかを証明している。