一方で、身体機能の観点から従来の和式便器を再評価する動きが皆無なわけではない。公衆衛生学や人間工学の研究においては、股関節と膝を深く曲げて深く屈む姿勢こそが、直腸と肛門の角度を直線化させ、腹圧を自然にかける理想的な排便態勢であると指摘されてきた。骨盤底筋の強化や下半身の柔軟性保持という点においても、日常的な「しゃがみ動作」には無視できないメリットが存在する。
対照的に、衛生面の懸念と物理的負担というデメリットは甚大だ。直接肌を触れない構造であるものの、洗浄時の水跳ねや飛沫による細菌飛散のリスクは免れない。何より、膝関節に不全を抱える高齢者や身体機能に制限のある人々にとって、自力での立ち座りを困難にする壁は極めて高い。身体的利点とバリアフリーへの時代の要請との乖離が、交代劇を決定づけている。