外交面における強烈な存在感は、彼の政治家としてのキャリアでも異彩を放つ。ベールを脱いだ『安倍晋三回顧録』には、国際舞台における生々しい駆け引きが克明に刻まれている。特にアメリカ合衆国大統領であったドナルド・トランプとの密接な関係は、従来の日本外交の常識を覆すものだった。ゴルフ外交に象徴される親密さを演出しつつ、同盟関係の破綻を水際で食い止める計算されたリアリズムが存在した。
「地球儀を俯瞰する外交」を掲げ、インド太平洋戦略の概念を国際社会に根付かせた手腕は、欧米諸国の指導者からも高く買われた。一方で、対ロシア外交における北方領土交渉の頓挫や、対中国政策における緊張緩和と包囲網形成のジレンマなど、大国間のパワーゲームにおける現実の壁も浮き彫りとなった。