マウイイワスナイソギンチャクが恐れられる最大の理由は、体内に蓄積されたパリトキシンという毒素の異次元の毒性にあります。
世界の海洋生物猛毒ランキングを比較しても、パリトキシンの危険度は突出しています。フグ毒として知られるテトロドトキシンや、猛毒ヘビの毒、さらには化学兵器レベルの青酸カリと比較しても桁違いの殺傷能力を誇ります。
マウス実験から推定されるパリトキシンのヒト致死量はわずか数マイクログラムから数十マイクログラム。体重60kgの成人であれば、耳かき1杯どころか目に見えないほどの微量(0.15mg未満)が体内に入るだけで心不全や多臓器不全を引き起こし、絶命に至る計算です。
パリトキシンの分子構造は非常に複雑で、生体内の細胞膜に存在する「ナトリウム-カリウムポンプ(Na+/K+-ATPase)」に不可逆的に結合します。このポンプは細胞が生存するためのイオン濃度バランスを保つ生命維持装置ですが、パリトキシンが結合するとポンプが単なる「開いた穴(チャネル)」へと強制変換され、細胞内外のイオンバランスが瞬時に崩壊。あらゆる神経伝達と筋肉収縮が暴走し、激しい細胞破壊が連鎖していきます。