境内に一歩足を踏み入れれば、日常の雑音が綺麗に消え去る。聞こえるのは、急流が岩を穿つ音と、樹々の葉が擦れ合う微かな羽音だけだ。滝から発生する大量のマイナスイオンと、自然界が奏でる高周波のサウンド。脳波が自然とアルファ波へと切り替わっていく感覚は、人工的なヒーリング施設では決して味わえない。
参拝者のひとりは「ここに来ると、頭の中で渦巻いていた仕事の悩みや人間関係の摩擦が、どうでもよくなる」と漏らす。拝殿の前で深く息を吸い込み、吐き出す。ただそれだけの動作が、身体の深部を洗い流していく。現代人が喉から手が出るほど欲しているのは、まさにこうした「無」になれる時間なのだ。