2026年現在、映画公開から20年余りを経て、庵治町のロケ地巡りは「一過性のブーム」から「文化的景観の鑑賞」へと深まりを見せている。監督の行定勲が描き出した叙情的な映像美は、東宝株式会社が手がけた数多の作品の中でも屈指の名作として今なお語り継がれる。とりわけヒロインを演じた長澤まさみが佇んだ「王ヶ頭庵治港の防波堤」や「皇子神社」からの眺望は、現在も作品の世界観そのままだ。
町内には主要なロケ現場を周遊できる案内標識や特製マップが再整備され、かつて「写真館」として撮影に使われたロケセット復元建物(雨平写真館)では、当時の撮影小道具やオフショット写真が展示されている。静かな波音を聞きながら防波堤に佇むと、スクリーン越しに見た切ない感情が蘇る。ファンの間での聖地巡礼は、単なる撮影地巡りを超えて、自身の記憶と風景を重ね合わせる深い体験として定着している。