歴史をさらに遡れば、天下無双と称された伝説の大関・雷電爲右衞門の時代から、力士と支援者の間には濃密な信頼関係が存在していた。日本相撲協会が組織される遥か以前、興行としての相撲は地域の名士や富豪の抱えによって成り立っていた背景がある。
雷電のような怪物的な力士であっても、土俵を下りれば一人の人間だ。怪我の恐怖や遠征の疲労に苛まれる日々の中で、谷町の医者のような存在は単なる金主ではなく、心身を預けられる精神的支柱だった。ただ金を出すだけの関係ではない。無償の愛にも似た情熱こそが、日本独自のパトロン文化を育む土壌となったのだ。