リチャード1世は1157年、イングランド国王ヘンリー2世と、ヨーロッパ屈指の広大な領地を持つアキテーヌ女公アリエノール・ダキテーヌの三男としてオックスフォードで誕生しました。彼が属したプランタジネット朝は、イングランドのみならずフランス西半部をも支配する「アンジュー帝国」を築き上げていた巨大な王家です。
幼少期のリチャードに絶大な影響を与えたのが、当時の宮廷文化と教養の中心地であった南フランス出身の母アリエノールでした。彼女の宮廷で育ったリチャードは、吟遊詩人(トルバドゥール)が歌い上げる騎士道精神や詩歌を愛する一方、早くから卓越した軍事才能を開花させます。
父ヘンリー2世に対する反乱に加わるなど、血族間での骨肉の権力闘争を繰り返しながら、リチャードは自領アキテーヌの反抗的な貴族たちを次々と武力で制圧。冷徹な戦術眼と先頭に立って敵を討ち倒す勇猛さから、若くして「獅子の心を持つ者(獅子心王)」の異名で恐れられる存在へと成長していきました。